週刊スーパーカブを作ろう~外装編[3] ヘッドライト周り
車体は既に完成していて書くことは溜まっていたのにブログのネタとしては面倒くさがってずっと放置していたカブの更新。
ヘッドライトはH4バルブが使える中華製ベーツライトにした。
本来カブのヘッドライトはジェネレータの出力の交流の電流で点灯するが、H4は直流12V駆動なのでバッテリの電源からイグニッションスイッチを介して駆動することになる。カブのヘッドライトが交流駆動のPH7なのはバッテリが貧弱だからだとかいう話を聞いたことがあるが、安定した電源が重要なFIモデルに限ってそんなことは無いだろう
バッテリの性能だってカブが生まれた半世紀前から進化しているはずだ。問題は起きてから対処すれば良い。
ヘッドライトステーはフロントキャリアの付いていたネジ穴を利用し、ホムセンステーをロウ付けして加工して制作した。
配線はフォークのカウルに穴を開けてグロメットを取り付けて通す。
純正ハンドルを加工して使用する都合上、ハンドルポストも純正のままだ。
アップガレージで拾ってきたスピードメータと合わせてみる。
メータに付いている側のステーを折り曲げ、ハンドルポスト手前の穴から長いボルトで支えている。
レッグシールドと合わせてみる。スッキリしたハンドル周りがとても良い。
多少の雨でも乗りたいので、フェンダーは純正とした。
カブのようでカブらしからぬ外観に仕上がってきている。
バルブステムシール交換
ここ半年ほどグースのオイル消費が激しい。
1000kmも走るとレベルゲージの上限まで入れていたオイルが下限まで減っている
これは流石に異常事態だ。
原因として考えられることとしてはいくつかある。
1. まず直接的にオイルが出ていくオイル漏れ。
2. 次にオイル下がり。主にバルブステムシールの劣化が原因だ。製造後25年経過したエンジンで、樹脂部品であるステムシールが硬化して十分に機能を果たしていない可能性は十分に考えられる。
3. 最後にオイル上がり。シリンダブロック内壁の傷やピストンリングの摩耗などによりオイルが燃焼室内に吸われていくことで起きる。
1についてはグースを置いている駐輪場の地面にシミなどあれば明らかだが、そういったものも無いのでこの可能性は低いだろう。なので今回疑うべきは2か3に絞られる。白煙など分かりやすい症状があればいいのだが、今回はそういったものもない。若干排気がオイル臭いような気はするが…
ここで一つ問題がある。はっきり言って面倒なのだ。
学生の頃はろくに授業にも出ず、部室にこもってキャブ時代のカブのエンジンを分解することに明け暮れていた。エンジンを分解すること自体は嫌いではないし、むしろ好きだ。
しかし、今の私のような自宅で青空整備をしている者にとっては、エンジンを開けた状態で作業を中断して次の週末まで放置ということができないのである。カブとさほど構造の変わらないグースのエンジンであれば、1日あればミッションまでバラして組み直すことができるただろう。当時の自分にこんなことができたのは、砂埃を避けられる部室をはじめとする十分な設備、それから自分と同じ趣味を持った部員という仲間がいたからだ。
したがって、晴れた日を狙ってその日の日中に作業し、日没前に作業を終えることが要求されるのである。
なので今回は「エンジンを降ろさず、ヘッドを外さずに」バルブステムシールを交換する。もしオイル上がりを起こしていたらその時はその時だ。
さて、前置きが長くなったが本題に入る。
ヘッドカバーは以前も開けたことがあるので迷うことはない。液ガスをスクレーパで除去しておく
ここでピストンを下死点に移動し、プラグホールから紐を入れていく。燃焼室内に十分な量の紐を詰めてピストンを上死点に動かすと、バルブスプリングを外してもバルブが燃焼室内に落ちないというわけだ。
3mm*10mの紐を用意したが、8~9mくらい入った。
次に、バルブコッタを外す。
バルブスプリングコンプレッサなんて便利な道具は持っていないし、そもそもヘッドを外さないと使えない。
そこで19mmのディープソケットを用意する。内側に小さいネオジム磁石などを入れておき、そのソケットでバルブリテーナをグッと押すと、コッタが外れて磁石に吸着される。
そうして無事にバルブスプリングを外すことができた。
バルブステムシールをペンチで掴んで外してみると、確かに経年劣化により硬化している。
4つともすべて予め発注してあった新品に交換した。
しかし一番の難関はこの後にある。バルブコッタを入れる作業にどうしても手が3つ必要になる。
手でバルブスプリングを縮めると指が痛くなるので、8mmなど細いメガネレンチ2本をあてがって両手でスプリングを押し込み、予めリテーナの縁に入れておいたコッタを第三者にピンセットでつついてもらって奥に入れるのだ。前方にバルブが傾斜している排気側が一番の難関だった。
私にはこの作業がどうしても無理で家族に手伝ってもらった。私が自分のバイクの整備で家族の手を借りたのは、この他にはカブのエンジンを載せる作業だけだったと思う。
なんやかんやでヘッドが組み上がった。出来ることならヘッドを外してシリンダ内壁状態チェック、ピストンリング交換、燃焼室カーボン落とし、バルブすり合わせなどのフルコース整備をしたかったのが心残りだった。
可能性は一つ潰せたものの、白煙など分かりやすい症状の無いオイル消費はしばらく走ってみないと分からない。経過は追って追記・投稿する。
オイル上がりだった場合の策も一応は考えてあって、一応予備のシリンダブロックは購入してあるので、スカイウェイブピストンで385ccボアアップでもしようと思う。
キャブセッティングなどすべてやり直す必要があるが、まあそれはそれで楽しいだろう。
タペット音について
グースはタペット音が鳴りやすい(ように思う)が、一方でバルブが4本しかないので調整が簡単なのも特徴の一つである。
タペット調整だけであればタンクを下ろせば可能だ。
しかし、タペットは既定値内なのになぜかタペット音がするという場合がある。
そういった場合はタペットアジャストスクリューの摩耗が疑われる。
写真のように、摺動箇所が線状に摩耗した跡がある。
交換にはヘッドカバーを外す必要があるが、そこまで難しい作業ではない。
なお、組み付け時に液状ガスケットが必要になる。
ついでにナットをキタコのチタンナットに交換。この程度の軽量化に意味があるかは不明だが自己満足だ。
フライホイールにソケットを突っ込んで回すプラグを開けたついでに、ボロボロになって固着していたOリングを交換した。汎用品のOリングをホームセンターで買ってこようと思ったが、そこまで高いものでもないので純正部品を一緒に購入した。
タペットアジャストスクリューを交換した結果、たしかにいくら調整しても消えなかったタペット音が解消している。
タペット音が気になるなら試す価値アリだ。
黒部ダムに行ってきた
今年の6月26日、黒部ダムの観光放水が始まった日のこと。
記事を下書きのまま漬け込んでたら半年経っていた。
実は昨年(2021年)も黒部ダムを見に行こうと思って車で大町まで行ったのだが、確か当時は関電トンネルバスの予約も受け付けていなかったため、当日券を求めて大町温泉郷で一泊した翌朝に扇沢を目指した。
しかし当時のコロナの波が空けたタイミングもあって扇沢までの道が大渋滞していて、動かない列の中で携帯で当日券の販売状況を確認し、売り切れになったのを見届けてからその場で引き返して結局ダムを見ずに帰ったのだった。
今回は関電トンネルバスの予約が出来るので、チケットを押さえてからその時刻を目指して東京から片道260kmをバイクで突っ走ることにした。
また梅雨の時期ということもあり、当日朝にでも中止できるように日帰り弾丸行程とした。
東京から黒部への行き方は色々あるが、今回はかねてより通ってみたかった十国峠を経由し扇沢へほぼ一直線のルートを取った。
秩父から山を2つ越えて佐久穂へ抜ける国道299号の内、佐久穂側の山越えが十国峠であり、つい最近(当時)まで落石により通行止めとなっていた関東屈指の酷道である。
朝5時半、都内の自宅を発って、飯能~秩父と経由して国道299号へ。
7時間後の関電トンネルバスを目指す。
行程のほとんどが山道と田舎道とはいえ、今思えば260kmを7時間というのはなかなか無茶な行程だ。
休憩は最低限、給油も可能であればしたくなかったが、リザーブより上を使い切ってしまったため、一度扇沢までの道に入ってしまうと給油ができないと判断して大町市で一度給油してなんとか間に合った。
やはりダムが好きだ。大自然の中にいきなり巨大な人工物がある不気味さ、違和感というか、なんとも言い難い感覚になる。
巨大建造物という点では普段見慣れている都会のビル群などと同じはずなのだが、自然の中にそれが一点存在しているという情景がそれを際立たせている。
黒部ダム建設のあらましについての展示もあり、峡谷を開削してこの景色を造っていく様子について詳しく解説されていて楽しむことができた。
あとダムといえばこれだろう。
ダムカードは堰堤端の売店のレジで頼むと貰うことができた。
ダムカレーはまあ普通のカレーだった。900円出すほどではないかな…
室堂などアルペンルートの更に奥に行きたいところだったが、帰りの行程もあるので今回はダムだけ見て帰ってきた。
帰路は日没後に十国峠のような峠越えをしたくなかったので諏訪方面に抜けて20号をひた走るルートを取った。20号でも日没後に笹子峠~大垂水峠を越えることになるが、さすがに国道20号沿いであれば携帯も通じるので何かあってもロードサービスを呼ぶくらいはできるだろうという判断だ。
総行程550kmトラブル無く目的地と自宅まで走りきってくれたグースに感謝だ。
この御老体のバイクでどこまで走り続けられるだろうか。
クラッチバスケット研磨と軽量オイルポンプドリブンギア
アイドリング状態でクラッチを握ってもギアが1速からNに抜けない。
そういった症状は大体クラッチバスケットの摩耗が原因だ。
そもそも摺動部分が鋳アルミでいいのかと思うのだが、世間一般的にクラッチバスケットはアルミ製だ。当然摩耗もするし、その結果としてクラッチレバーを握ってもクラッチを引きずった状態になる。
これを外して棒ヤスリで軽く研磨してやることでクラッチの切れを正常に戻すことができる。
クラッチバスケットを外す際、センターナットが拍子抜けするくらい軽いトルクで緩んだので驚いた。カタナ400なども、このクラッチセンターナットが緩みやすいというが、それと同様の症状だろうか。ワッシャは新品を発注し、緩み止めのカシメは念のため2辺を折り曲げた。
クラッチバスケットを外したついでに、DR250用のオイルポンプドリブンギアを入れる。これはKamoair氏の情報により知ったものだが、グースのものに比べて肉抜きが施されており軽量だ。
DRとグース、どうしてこういった差があるのだろう。確かに謎だ。
フライホイール軽量化
グースのフライホイールは、単気筒エンジンなだけあってかなり重い。
3.3kgほどある。
これを軽くしたら乗りやすさと引き換えにとんでもないレスポンスが手に入るのではないかというのは、誰もが考えることだと思う。
Twitterでも、グースのフライホイールを軽量化した事例が何件か確認できる。
そこで、私も近所の旋盤加工が出来る店に依頼して切削して頂いた。
グースのフライホイールは発電用の磁石が入っている部分より根本の円盤状の部分が、慣性重量を稼ぐための重りになっている。この部分を削り落とすのが一般的なようだ。
ただし、この部分にはフライホイールのバランシングのためにドリルで切削された穴がいくつか空いている。これの位置と個数は個体によって異なるようだ。まあ単気筒でそんな厳密なダイナミックバランスなど気にしても仕方が無いような気がしていたが、一応その加工屋さんに相談してみたところ、「そこまで気にするのは費用対効果に合わない」とのこと。なのでバランスは気にしないことにした。
その結果、2.80kgほどまで軽くなった。
早速組んでみると、まず始動してすぐ違いがわかる。まずアイドリングの音が軽い。空吹かしが軽い。
乗ってみると、以前なら巡航に使えていた2000~2500rpmのトルクが明らかに削がれている。街乗りでも3000は回していないと駄目だ。
少しスロットルを開けると鋭い加速が炸裂する。特に、追い越しなどの中間加速が素晴らしい。
ピーキーな特性にはなったが、"楽しい乗りづらさ"ではあると思う。結果としては大満足だ。