バルブステムシール交換

ここ半年ほどグースのオイル消費が激しい。

1000kmも走るとレベルゲージの上限まで入れていたオイルが下限まで減っている

これは流石に異常事態だ。

原因として考えられることとしてはいくつかある。

1. まず直接的にオイルが出ていくオイル漏れ。

2. 次にオイル下がり。主にバルブステムシールの劣化が原因だ。製造後25年経過したエンジンで、樹脂部品であるステムシールが硬化して十分に機能を果たしていない可能性は十分に考えられる。

3. 最後にオイル上がり。シリンダブロック内壁の傷やピストンリングの摩耗などによりオイルが燃焼室内に吸われていくことで起きる。

1についてはグースを置いている駐輪場の地面にシミなどあれば明らかだが、そういったものも無いのでこの可能性は低いだろう。なので今回疑うべきは2か3に絞られる。白煙など分かりやすい症状があればいいのだが、今回はそういったものもない。若干排気がオイル臭いような気はするが…

ここで一つ問題がある。はっきり言って面倒なのだ。

学生の頃はろくに授業にも出ず、部室にこもってキャブ時代のカブのエンジンを分解することに明け暮れていた。エンジンを分解すること自体は嫌いではないし、むしろ好きだ。

しかし、今の私のような自宅で青空整備をしている者にとっては、エンジンを開けた状態で作業を中断して次の週末まで放置ということができないのである。カブとさほど構造の変わらないグースのエンジンであれば、1日あればミッションまでバラして組み直すことができるただろう。当時の自分にこんなことができたのは、砂埃を避けられる部室をはじめとする十分な設備、それから自分と同じ趣味を持った部員という仲間がいたからだ。

したがって、晴れた日を狙ってその日の日中に作業し、日没前に作業を終えることが要求されるのである。

なので今回は「エンジンを降ろさず、ヘッドを外さずに」バルブステムシールを交換する。もしオイル上がりを起こしていたらその時はその時だ。

 

さて、前置きが長くなったが本題に入る。

ヘッドカバーは以前も開けたことがあるので迷うことはない。液ガスをスクレーパで除去しておく

ここでピストンを下死点に移動し、プラグホールから紐を入れていく。燃焼室内に十分な量の紐を詰めてピストンを上死点に動かすと、バルブスプリングを外してもバルブが燃焼室内に落ちないというわけだ。

3mm*10mの紐を用意したが、8~9mくらい入った。

次に、バルブコッタを外す。

バルブスプリングコンプレッサなんて便利な道具は持っていないし、そもそもヘッドを外さないと使えない。

そこで19mmのディープソケットを用意する。内側に小さいネオジム磁石などを入れておき、そのソケットでバルブリテーナをグッと押すと、コッタが外れて磁石に吸着される。

そうして無事にバルブスプリングを外すことができた。

バルブステムシールをペンチで掴んで外してみると、確かに経年劣化により硬化している。

4つともすべて予め発注してあった新品に交換した。

しかし一番の難関はこの後にある。バルブコッタを入れる作業にどうしても手が3つ必要になる。

手でバルブスプリングを縮めると指が痛くなるので、8mmなど細いメガネレンチ2本をあてがって両手でスプリングを押し込み、予めリテーナの縁に入れておいたコッタを第三者にピンセットでつついてもらって奥に入れるのだ。前方にバルブが傾斜している排気側が一番の難関だった。

私にはこの作業がどうしても無理で家族に手伝ってもらった。私が自分のバイクの整備で家族の手を借りたのは、この他にはカブのエンジンを載せる作業だけだったと思う。

 

なんやかんやでヘッドが組み上がった。出来ることならヘッドを外してシリンダ内壁状態チェック、ピストンリング交換、燃焼室カーボン落とし、バルブすり合わせなどのフルコース整備をしたかったのが心残りだった。

可能性は一つ潰せたものの、白煙など分かりやすい症状の無いオイル消費はしばらく走ってみないと分からない。経過は追って追記・投稿する。

 

オイル上がりだった場合の策も一応は考えてあって、一応予備のシリンダブロックは購入してあるので、スカイウェイブピストンで385ccボアアップでもしようと思う。

キャブセッティングなどすべてやり直す必要があるが、まあそれはそれで楽しいだろう。